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INTERVIEW

小林唯さんインタビュー「“好き”に正直に」▷帝国劇場クロージング公演、ミュージカル『レ・ミゼラブル』に出演

ミュージカル『この世界の片隅に』に出演、さらに帝劇クロージング公演『レ・ミゼラブル』に抜擢されるなど、いま大注目の俳優、小林唯さん。劇団四季で『アラジン』『美女と野獣』の主演を務めるなどの活躍後、今年8月には自身初となるソロコンサート「Link」を成功させました。

圧倒的な歌唱力と表現力、瑞々しいたたずまいで輝きをみせる小林さんに、コンサートの振り返りや年末からの開幕を控える『レ・ミゼラブル』への意気込み、さらに大切にしていることなど、「今とこれから」をたっぷり伺いました。

――昨年末に、2013年から在籍していた劇団四季を退団されました。

18歳のときに観た『サウンド・オブ・ミュージック』に衝撃を受けたことがきっかけで入団した劇団四季。本当にかけがえのない時間を過ごさせていただきました。30歳という区切りを迎え、「一度しかない人生、さらにいろんな経験を積んでみたい」と思い切って卒業しました。

――退団後、初めての出演がアンジェラ・アキさんが音楽を手掛けたことでも大きな話題となった『この世界の片隅に』でした。新天地に飛び込む不安はなかったでしょうか。

もちろん!最初はものすごく緊張しました。果たして自分が通用するのかと…。でも、その一方で、自分がこれまでやってきたことへの信頼もありました。自分の芯がブレなければ大丈夫だと。

――演じたのは、主人公にほのかな思いを寄せる幼馴染、水原哲役です。これまで演じてこられてきた役とはまた異なる、ストレートプレイ中心の役どころでした。

実は、台本を読むまで歌がほとんどないということを知らなくて…(笑)。台本を探せども歌がなくて、「あっ、そうなんだ!?」とビックリしました(笑)。でも、歌がなくても、お芝居だけできっちりと成立する役ですし、個人的には歌と同じくらいお芝居も大好きなので、『この世界の片隅に』という素晴らしい作品の中で、水原という役を精いっぱい演じさせていただいたという思いでいっぱいです。幕が上がるまでは、〝歌わない自分〟をお客様が受け入れてくださるのだろうかという不安はありましたが、終演後、以前から応援してくださってきた方々からも「すごくよかった!」と感想をいただき、新しい自信にもつながりました。

共演も、みなさん、映像や声のお仕事など、いろんなジャンルで活躍されている方々ばかり。3か月という密度の濃い時間の中で、とても良い刺激をいただきました。

小林唯さんのファーストコンサート「Link」より
撮影/長谷川美緒(Tree&River)

――8月には東京・有楽町の「I’M A SHOW」でソロコンサートを開催されました。初日はチケット完売、9月に追加公演が決定するなど、大成功となりました。『この世界の片隅に』のメドレーや、『美女と野獣』『アラジン』の名曲、さらに『レ・ミゼラブル』のオーディションで歌った曲など、ご自身のヒストリーが詰まったセットリストでしたね。

自分自身が思い入れがあり、なおかつお客様にも楽しんでいただける曲をセレクトしました。コンサートは全くの初めて。始まる前は「もうコンサートなんて二度とやらない…」という気持ちになってしまうのではないかとドキドキしていましたが、緊張がお客様に伝わっては申し訳ないと気持ちを切り替えて臨みました。舞台に立っている間も、終わった今も、まるで夢を見ていたかのような素晴らしい時間でした。お客様と生で触れ合うことができ、生身の自分を知っていただくこともできたのではと。これからも、ずっとコンサートの開催を重ねていければうれしいです。

コンサート「Link」にて、ゲストの昆夏美さんと。
撮影/長谷川美緒(Tree&River)

――ゲストには『この世界の片隅に』でも共演された昆夏美さんがご出演されました。初めてデュエットされて、いかがでしたか?

昆さんはとても親しみやすい方で、『この世界の片隅に』の時から気さくに話してくださっていたのですが、「よくよく考えたら、こんなスーパースターとご一緒できるなんて、すごいことだな」と…(笑)。コンサートでも、初めての曲でもすぐに完璧に仕上げてらっしゃって。改めて昆さんのすごさを実感しました。

――今年12月から始まる帝国劇場クロージング公演『レ・ミゼラブル』のアンジョルラス役に抜擢されました。革命を率いるカリスマ的なリーダーです。

『レ・ミゼラブル』を初めて観たのは2019年。そのときは、スケール感に、ただひたすらに圧倒されました。特別な作品だと思いますし、あれから5年で、その作品に出演できるなんて、不思議な気持ちにすらなります(笑)。

――オーディションを受けたとき、第一希望がアンジョルラス役だったそうですね。

『レ・ミゼラブル』はどの役も隙がなく、とても濃度が高いのですが、僕の声の強みをいかせるのはアンジョルラス役だなと。「かっこいい!」と直感的に思いました。

――先日、衣裳合わせだったそうですね。

アンジョルラスのあの特徴的な衣裳に袖を通したとき、「今まで客席から観ていたあの役を自分が本当に演じるんだ」という、なんともいえない高揚感がありました。いよいよ本当に始まるのだなと…。

――本作は、帝劇のクロージング公演という記念碑的な舞台でもあります。

友人から、「大学野球の聖地は神宮球場、ミュージカルは帝劇」と聞いて、まさにそうだなと(笑)。そんな崇高な場所に、新参者の自分が滑り込みで立たせていただけるとは…。まさにお導きというしかないですね。

――劇団四季に入団を決められたときも、もともと建築士を志していたけれど、一念発起してオーディションを受けられたのですよね。チャンスをものにできる力が素晴らしいと感じています。

人生の重要な選択を迫られたとき、「今しかない!」というインスピレーションがパッと降りてくるんです。ちょっとスピリチュアルなニュアンスに聞こえてしまうんですが(笑)

――力みなく、とても軽やかに新しい世界に飛び込まれているという印象です。

先ほども少しお話しましたが、自分の芯さえブレなければ、ほかは肩の力を抜いてやっていけるのではと思えるようになってきました。

――「自分の芯」について、お聞かせいただけますか。

これまでずっと、「言葉」を大事にしてきました。言葉に込められている情景や意味を丁寧に表現していく。あとは、「楽しむ」ということでしょうか。新型コロナウイルス禍ですごく落ち込んでいたとき、言葉に励まされたくて、X(旧Twitter)で名言ボットをたくさんフォローしていました。その中で孔子の「知之者不如好之者、好之者不如樂之者」
(天才は努力する者には勝てず、努力する者は楽しむ者には勝てない)という言葉に出合いました。この言葉は決して才能も努力も否定していないのですが、「楽しむ」を大事にしている自分にスッと染み込んでいきました。

僕自身、「褒められたい、期待にこたえたい」ということはあまり考えないようにしていて。期待にこたえようとすると、表現にウソが出てしまう。すると、結果的にお客様の期待にもこたえられないと思うんですね。好きという気持ちを正しくぶつけることで、お客様の心も動かせると信じています。

――その真っすぐな気持ちが、今の小林さんを作っているのですね。社会に出ると、なかなか「好き」という気持ちに正直にいられることが難しいので、とてもまぶしいです。

子どものころから、「やりたい」ということはなんでもさせてもらってきました。水泳選手になりたい、画家になりたいとえば、全力で母がサポートしてくれました。両親はアート系の職業なのですが、「アートに正解はない」という信念を持っています。あるとき、僕が学校の図工の授業で、唇を青く塗ったんです。すると先生には「唇は肌に近い赤色で描くように」と言われたのですが、一方で、両親は青で塗った僕をものすごく褒めてくれました。そのような思い出があるので、お芝居についても「正解はこうあるべき」という考えを持たないようにしています。

――「楽しむ」一方で、とてもストイックに歌やお芝居に取り組まれているように思います。その歌唱力を維持するために、何か心がけていらっしゃることはありますか。

ボイストレーニングに行ったり、あとは自分で自分の歌を録音して、「歌が歌になっていないか。自分の言葉になっているか」と問いかけながら何度も聞き返しています。歌が単なるパフォーマンスにならないように、ということを気を付けていますね。
ストイックな面は確かにあるかもしれません。ゾーンに入ってしまうと止まらなくなるんです。カラオケに歌の練習のため一人で行くこともあるのですが、何度も何度も延長を繰り返して、気づけば延々6時間個室で歌っているという…(笑)

――ものすごい集中力ですね!最近、お仕事以外でゾーンに入ったことはありますか。

小・中学生の時に水泳をやっていたのですが、最近、運動のために再開したんです。泳いでいるうちに、フォームなどが気になりだして、オリンピック選手の動画をたくさん観て研究したり、この年齢でも出られる大会があるか調べてしたりと、のめりこんでしまいました(笑)。自分でも「運動のためなんだからもっと軽くやればいいのに」と分かってはいるのですが(笑)。

――家具づくりも得意でいらっしゃいますし、すごく引き出しが豊富ですね。お仕事でも、これからもどんどん活躍の場を広げていかれそうですね。

『この世界の片隅に』やコンサートを経て、さらには年末からの『レ・ミゼラブル』。どんどん僕の新しい面をみていただければと思います!

 

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/鴨志田 拓海(産経新聞社)
ヘア&メイク/本多真美
スタイリスト/塚本隆文



小林 唯(Kobayashi yui)

1993年2月27日生まれ。兵庫県出身。大阪市立咲くやこの花高校演劇科卒業。
2013年劇団四季研究所入所。同年9月に『コーラスライン』で初舞台を踏み、その後『キャッツ』(スキンブルシャンクス役)、『アラジン』(アラジン役)、『パリのアメリカ人』(アンリ・ボーレル役)、『美女と野獣』(野獣役)など数々の作品で主要な役を務め、2023年に退団。
幅広い音域での高い歌唱力を武器に今後の活躍が期待される。劇団四季退団後、ミュージカル『この世界の片隅に』(水原哲役)に初出演した。
2024年12月20日に開幕する、帝国劇場クロージング公演、ミュージカル『レ・ミゼラブル』で、アンジョルラス役で出演することが決定している。

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Stage Information

ミュージカル『レ・ミゼラブル』

作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作:ヴィクトル・ユゴー
作詞:ハーバート・クレッツマー
オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
翻訳:酒井洋子
訳詞:岩谷時子
製作:東宝

出演
ジャン・バルジャン:吉原光夫 / 佐藤隆紀 / 飯田洋輔
ジャベール:伊礼彼方 / 小野田龍之介 / 石井一彰
ファンテーヌ:昆夏美 / 生田絵梨花 / 木下晴香
エポニーヌ:屋比久知奈 / 清水美依紗 / ルミーナ
マリウス:三浦宏規 / 山田健登 / 中桐聖弥
コゼット:加藤梨里香 / 敷村珠夕 / 水江萌々子
テナルディエ:駒田一 / 斎藤司 / 六角精児 / 染谷洸太
マダム・テナルディエ:森公美子 / 樹里咲穂 / 谷口ゆうな
アンジョルラス:木内健人 / 小林唯 / 岩橋大

上演スケジュール
【東京】帝劇公演 2024年12月20日(金)本初日~2025年2月7日(金)千穐楽
*プレビュー公演:2024年12月16日(月)~12月19日(木)

【大阪】梅田芸術劇場メインホール 2025年3月2日(日)~3月28日(金)
【福岡】博多座 2025年4月6日(日)~4月30日(水)
【長野】まつもと市民芸術館 5月9日(金)~5月15日(木)
【北海道】札幌文化芸術劇場hitaru 2025年5月25日(日)~6月2日(月)
【群馬】高崎芸術劇場 2025年6月12日(木)~6月16日(月)

公式サイトはこちら

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