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INTERVIEW

加藤和樹さんインタビュー「やさしさをお土産に」▷舞台『裸足で散歩』

2022年に上演されたニール・サイモンの傑作コメディ『裸足で散歩』が、今秋、再演されることが決定しました。加藤和樹さん、高田夏帆さん、松尾貴史さん、戸田恵子さんの前回の座組に福本伸一さんを新たに加え、大阪を皮切りに全国をツアーします。

真面目な新米弁護士のポール(加藤さん)と自由奔放な妻・コリー(高田さん)は新婚。引っ越し先のアパートで、一風変わった住人(松尾さん)とコリーの母、バンクス夫人(戸田さん)、さらには電話工事の男(福本さん)も入り乱れ、愛の巣で繰り広げられる新婚生活は思わぬ方向に向かっていきます。
最高のメンバーとともに再び本作に臨む加藤さんにお話を伺いました。

――2022年の初演からわずか2年で再演が決定しました。

前回すごく楽しくて、すぐ再演やりたいねという話をしていたんです。早いタイミングでの再演となり、とてもうれしいです。
人数の少ないシチュエーションコメディなので、変化や状況説明をお芝居でみせていかなければならない。緊張感もありながら、すごく充実した時間でした。またあの時間が帰ってくると思うと楽しみですね。

――ミュージカルへの出演が多いイメージの加藤さんですが…。コメディのストレートプレイならではの難しさややりがいはありますか。

ストレートプレイで歌がないので、お客さんの気持ちをどう途切れないようにするかが大事になっていきます。お芝居は動きだけでみせるシーンがある。そこでいま何が起こっているのか、ちゃんとお芝居でみせなければならない。なんてことのないシーンにしないように、ひとつひとつに意味を持たせていくことが必要です。特にこういうコメディだと、お客さんが笑える瞬間というのを作ってあげないと。その間を待たずにいくと、お客さんも笑いたいのに笑えない状況になってしまう。とはいえ、笑い待ちをしてはダメなんですよね…。そのさじ加減が、ものすごく難しい。あくまでも、笑いというよりもお芝居を届けるという気持ちで、ほしがらない(笑)。あれ、東京公演ではここでウケたのに…、と芝居中に思ってしまうと負け、雑念になってしまう(笑)。ちゃんと舞台上で、役として生きていればお客さんもハマってくれるはず。お客さん、そして演出を信じて。

――加藤さんの中で、やはりミュージカルがホームグラウンドという位置づけでしょうか。

いえいえ、実は僕、もともとストレートプレイしかやっていなかった人間ですから。前は、「こんなにセリフ少なくていいの⁉」「なんでここで歌うんだよ!」と思っていたくらい(笑)。自分がミュージカルに出演させていただくようになってからは、歌もお芝居なのだと理解して。それまではミュージカルを理解しないままミュージカルを観ていたんですね。制作に至るまでも作品についても知らないのってよくないなと思って。僕は必ず舞台を観るときは、パンフレットを買うようにしているんです。この『裸足で散歩』も、ある程度、前知識を持ってからご覧いただくとより楽しいと思います。キャラクターの名前を知っているだけでも、情報の処理速度が変わってきますから。

――ものすごくロジカルでいらっしゃいますね!真面目なポールに似ているような…。

彼ほど神経質ではないですね。どちらかというと、コリーに似ています。「なんとかなるっしょ!」精神というか…(笑)。でも、人からは真面目といわれることが多いですね。そうみせているだけなんですが…(笑)。あ、時間にだけは真面目です!絶対に遅刻しない。実は昔、デビューしたばかりの頃に、集合時間に起きるという大遅刻をやらかしまして…。なんの経験もない下っ端の僕が、一番の大遅刻。現場に行くまでのロケバスの気まずいことといったら。地獄でした。もう絶対にあんな思いはしたくなくて…。

――前回は2022年のコロナ禍での公演でした。

確かに、前回は稽古中もみんなマスクをしていましたね…!みんなで稽古のあとにご飯に行くこともなかったですし。今回は地方公演も多いですし、キャスト同士の絆がより深まりそうです。

――再演ならではの楽しみはありますか。

再演は、初演と比べられてしまうので、嫌がるひともいるんです。でも、僕は新たに作りなおすことができるので楽しみです。いいところは引き継ぎつつ、また新たに演出的にこうしようというところは、相談しながら作っていきたいですね。テンポ感の作品にしていきたい。今にして思えば、あそこはもっとテンポよくいったほうがよかったな…というシーンがあったりするんです。待つ笑いではなく、テンポよく魅せるからこその笑い。

あとは、役を外れないことですね。僕がどうこうではなく、あくまでもポールを軸に。そういう意味では本当に戸田さんが素晴らしくて。ちゃんとかわいいし、おもしろい。ちゃんとついていけばよかったな、と…(笑)。どうしても、ここで自分もおもしろいことしなきゃ、と思ってしまった。翻弄される役なんで、その翻弄されてる姿がおもしろい。彼自身がおもしろくなくてもいいんです。そこをはき違えず、ポールとして頑張りたいですね。初演は初演として完成されたものをお届けしているんですが、やったからこそ分かるものがあると思います。お芝居に完成はありませんから、さらにアップデートしていけるということは、役者としてはすごくうれしいですね。

――この2年間、『BACKBEAT』や『カム フロム アウェイ』など、ハードな挑戦もされてきました。

すべての作品が大事ですが、『BACKBEAT』は音楽をやっていてよかったと改めて思う経験でした。伝説の実在のミュージシャンを役者が演じるというのは、相当に精神力も体力も持っていかれます。そのような中で、ロック魂を共有しながら、同世代のキャストとあの作品を作り上げられた。出会う役のひとつひとつが、自分を成長させてくれます。共演者もそうですね。『カム フロム アウェイ』でも、あんな大御所の先輩たちが、稽古場でハアハア言いながら、「やばい、セリフ覚えられない」と苦しんでいる姿なんて、普通は見られませんからね(笑)。こんないろんな経験してきた先輩方がこうなるんだって、逆にすごい励まされました。よかった、先輩方もちゃんと人間なんだって…(笑)。
「自分ももっと頑張らなきゃ!」とも思いました。

人間が培ってきた経験を出す場所が舞台。本作もそう。ある意味、過去の自分と向き合うことでもあると思っています。今はもう少し肩の力を抜いて演じられるんじゃないかな…。

――プライベートでは、今も韓国に通っていらっしゃると聞きます。

最近は韓国以外、海外には行っていないですね。普段の旅行では計画を立てずに行った先で何かをするタイプなのですが、韓国はある程度計画を立てて行っています。午前中はボイストレーニング、午後はミュージカル鑑賞。僕、韓国で観光したことがなかったんです。ホテルとレッスンと劇場だけ。もはや通勤です(笑)。おかげで地下鉄はすごく詳しくなりました。移動はほぼ地下鉄ですから。

――すごいですね!どうしてそこまで韓国ミュージカルに惹かれているのでしょうか。

すごく勢いがあって、刺激がたくさんあるんです。向こうの作品作りの過程を見学させていただいたこともあるんですが、すごく自由で。作る側も演じる側も、おたがいにすごくディスカッションを重ねる。役割分担はもちろんあるんですが、役者、スタッフ、壁がない感じがします。

僕自身はミュージカルの基盤がもともとない人間なので、そこからいいものを吸収していけたらと。日韓の架け橋というと大げさに聞こえますが、僕を通して、韓国がアツいらしいよとか、韓国版と日本版の違いとか気づくきっかけになれば。世界に目を向けた作品作りを、同じアジアの、お隣の韓国がやっている。手と手を取り合って、同じミュージカルを表現する上で、尊重しあって、今後のミュージカルつくっていければと、ひとりのミュージカルファンとして思います。日本も若手がすごく勢いがありますから。僕は今年40歳になるんですが、これまでたくさんの先輩方から教えていただいたことを自分たちが返していきたいという思いがあります。

――今回は10以上の都道府県を周ります。

本当に待ちに待った公演です。やっぱり、お客さまからいただくエネルギーってすごいんですね。コロナ禍では無力さに打ちひしがれたこともありましたが、この業界にいる限り、エンタメの力を信じたい。お客さまからの「感動した」「よかった」という言葉があるから、僕は生きていける。

エンタメには華やかだったり、現実離れしたイメージがありますが、どの作品も、日常に持って帰ることができるものが必ずある。今回は、やさしい心をお土産にできるハートフルな作品です。全国でお会いできる日を楽しみにしています。

 

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/酒巻俊介(産経新聞社)


加藤和樹(KATO KAZUKI)

1984年10月7日生まれ。2005年ミュージカル『テニスの王子様』で脚光を浴びる。音楽活動を精力的に行い、2009年韓国、台湾、中国でCDデビューを果たす。俳優としてはドラマ・映画・舞台のほか、ミュージカルや声優としても活躍している。第46回(2020年度)菊田一夫演劇賞受賞。
舞台『裸足で散歩』が9月27日大阪公演を皮切りに、11月まで東京ほか全国で再演が決定。ニール・サイモン脚本のハートフルコメディにふたたび挑む。また、2025年1月に上演するミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』でラウル・シャニュイ子爵役を演じることが発表になった。

NEWS!
加藤和樹生誕40周年記念写真集&グッズ発売!!
詳細は加藤和樹さん公式サイト

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Stage Information

『裸足で散歩』

作:ニール・サイモン
翻訳:福田響志
演出:元吉庸泰

出演:
ポール・ブラッター:加藤和樹
コリー・ブラッター:高田夏帆
電話会社の男:福本伸一
ヴィクター・ヴェラスコ:松尾貴史
バンクス夫人:戸田恵子

企画・製作:シーエイティプロデュース

【東京公演】
日程:2024年11月8日(金)~11月19日(火)
会場:銀座 博品館劇場
お問い合わせ:チケットスペース 03-3234-9999(10:00~15:00 ※休業日を除く)

他、大阪、茨城、神奈川、静岡、東京・曳舟、東京・保谷、北海道(幕別、士別、中標津、札幌、大空)、宮崎、大分、宮城、愛知、香川公演あり

公演公式サイトはこちら

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