東京・渋谷の東急シアターオーブで、ブロードウェイ・ミュージカル『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』が7月21日まで上演中だ。
大ヒット映画を主演のウーピー・ゴールドバーグ自身がプロデュースした、いわずとしれた名作。修道院に身を隠すことになったクラブ歌手のデロリスとシスター(修道女)たちが歌を通じて自分の殻を破っていく物語。心揺さぶるメッセージと、アラン・メンケンによるキャッチーな音楽で、熱烈なファンも多い。
2015年、2017年に続く7年ぶりの来日公演となる今回は、2023年に韓国で結成されたツアーカンパニーによるものとなる。ミュージカル『マリー・アントワネット』のロバート・ヨハンソンが手掛ける新演出版だ。
まずは、客席につくなり、巨大な額縁のような装置に目を惹き付けられる。名曲「Take Me to Heaven」のイントロが流れるや、電飾がテンポよく輝き、一気にボルテージが上がる。豪華な装置とネオンのような電飾が、1970年代のフィラデルフィアの空気感を盛り上げていく。巧みなプロジェクションやドラマティックな照明も、舞台にメリハリを生んで見事。あるシーンでは、絵がコミカルに動いたりする遊び心もあり、サービス心あふれる仕掛けで細部まで目が離せない。
撮影/渡部孝弘
また、ヨハンソンによる新演出は、ちょっとした小道具の使い方などを通じて、登場人物の心理を深く、鮮やかに、くっきりと浮かび上がらせる。登場人物の行動により説得力が増した印象を受けた。
撮影/渡部孝弘
撮影/渡部孝弘
主演のデロリス(ニコール・ヴァネッサ・オーティス)、厳格な修道院長(メアリー・ガッツィ)ら、ブロードウェイにてオールオーディションで選ばれたキャスト陣のパワフルな歌唱力はさすがの一言。
撮影/渡部孝弘
出色はシスター・メアリー・ロバートを演じたソフィー・キム。メアリー・ロバートは最初こそ内気だが、聖歌隊の指揮を執ることになったデロリスとの出会いにより、自分の意志を持ち、羽ばたいていく。物語のテーマを象徴するような重要な役どころだ。韓国を代表するディーヴァ、キムがこれを完璧に体現した。
メアリー・ロバ―トが、勇気を出して初めて大きな声で歌うあの名場面。殻を破るその瞬間のキムの爆発的な歌声、輝き、爽快感。鳥肌が立ち、思わず拍手をしてしまった。キレッキレのダンスと可憐な笑顔も素晴らしかった。
これまでの来日公演や日本語版もすべて見ているというファンも多いかもしれないが、そんなファンも満足させるであろう新演出版だった。やっぱり「天使にラブ・ソングを…」は裏切らない。
取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
舞台写真/撮影/渡部孝弘
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Stage Information
ブロードウェイ・ミュージカル
『天使にラブ・ソングを…(シスター・アクト)』
オリジナルプロデュース:ウーピー・ゴールドバーグ
作曲:アランメンケン
演出:ロバート・ヨハンソン
出演:来日カンパニー
【東京公演】
2024年7月3日(水)~21日(日) 東急シアターオーブ
【大阪公演】
2024年7月24日(水)~7月28日(日) オリックス劇場
Story
ディスコフィーバー真っ盛りの1977年、クリスマスイヴ。
フィラデルフィアでスターを夢見るクラブ歌手・デロリスは殺人事件を目撃してしまう。
主犯である愛人のギャングに命を狙われ、修道院に逃げ込むことに……。
規律正しい生活に馴染めないデロリスだが、ある日、聖歌隊の特訓を任される。
聴くに堪えなかった聖歌隊は瞬く間に上達し、閉鎖危機にあった修道院は一気に注目の的に!
ところが、その噂はギャングの耳にまで届いてしまい……。
果たしてデロリスは、この危機を切り抜けることができるのか!