今年7月から東京都江東区のEXシアター有明(東京ドリームパーク内)で上演されるミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』で、俳優の柿澤勇人さんが主演を務めます(吉沢 亮さんとダブルキャスト)。2024年には読売演劇大賞優秀男優賞と菊田一夫演劇賞を受賞、現在も主演ドラマ「終のひと」(TBS系)が放送中とますますの活躍がまぶしい柿澤さんに、本作への思いを聞きました。
――本作は社交不安障害を抱える高校生がクラスメイトの死と、とっさについた嘘がきっかけで本当の自分に気づくまでの過程を描く傑作ミュージカルです。2016年にニューヨーク・ブロードウェイで上演され、トニー賞6部門を受賞するなど、高い評価を得ました。柿澤さんご自身も、ブロードウェイでの開幕直後から音源や英字台本を取り寄せたほど大好きな作品だそうですね。この作品のどこに惹かれたのでしょうか。
まずはなんといっても音楽がすばらしいですよね。そしてもちろんストーリー。日本人が演じても遜色なく伝わるだろうと思っています。時代設定が現代ですし、SNSを使ったことで事態が思わぬ方向に行ってしまうという仕掛けもとても普遍性があると思うんです。SNSが巻き起こす事象って、いいことも悪いことも、日本のみならず世界中にあふれている。それがきっかけで人生が狂ってしまう人もいれば、人間の愛を改めて感じさせてくれるようなことも。
この作品が作られたのは10年以上前ですが、当時よりもいまはSNSの力が増していると思います。この作品は、そのような私たちにとって強い影響力を持つSNSをモチーフのひとつとしながら、コミュニケーションの取り方や家族、友情、恋愛といった普遍的なテーマを根本におき、丁寧に描いています。

亡くなったクラスメイトは主人公のエヴァンをいじめていたんですが、そういったいじめっ子にも家族がいて、とても彼のことを愛している。一方のエヴァンにも、息子を想う気持ちは確かに持っている母親がいる。でも、その愛情とエヴァンの本当の気持ちとの間には、少しすれ違いがあったりします。表面的な部分だけではなく、深いところまで人間を繊細に掘り下げています。
舞台自体はアメリカなのですが、2026年の日本で日本人が演じても、観ていただくみなさまに無理して超えなければいけない壁はあまりないと思っています。
――満を持しての日本初演ですね。エヴァンは役の上ではティーンエイジャーですが、38歳になったいまの柿澤さんだからこそ表現したい部分はありますか。
年齢を重ねて経験をしてきたということはプラスに働いてくれると思います。高校生を中心とした物語なのでもちろん若々しいエネルギーは必要だけれど、この作品が大切にしている友情や家族といった普遍的なものをしっかりと届けられればと思っています。
このミュージカルは2021年に映画化され、ミュージカルでも主演を務めたベン・プラットがエヴァン役を演じているのですが、ベンは映画化の時に30歳近くだったようなので、僕もいけるかなと…(笑)。衣裳も学生服ではなく、ラフな普段着ですし。大事なのはキャラクター、そして舞台の上でのキャスト同士のやりとりだと思っています。

これから再演を重ねていくようなすばらしいミュージカルだと思うので、未来がある才能にあふれた俳優の方々が今回の舞台を観て「自分もやりたい」と思ってもらえるような、そんな日本初演になれば光栄です。
今回は新しい劇場のこけら落とし公演ということですので、そういった面でも「やるぞ!」という思いもあります。年々チケット料金が値上がりし、なかなか生のお芝居を観るハードルはあがっていますが、この作品でミュージカルのすばらしさを知っていただきたいです。
――ダブルキャストに吉沢 亮さん、さらに安蘭けいさん、堀内敬子さん、木下晴香さん、松岡茉優さんら、実力と華を兼ね備えた豪華なメンバーが集結しました。
これからの日本のエンターテインメント界を代表して背負っていかれるであろう吉沢さんとご一緒できるというのは、とんでもない経験です。僕が吉沢さんの演技を一番そばで観ることができる。ほかのみなさんも僕が大ファンの方ばかりで、非常に心強いカンパニーです。楽しみですね。
――今回のエヴァンも悩み多い役柄ですが、これまでもハムレットやジキル&ハイドなど、陰影のある役を好演されてきました。演じがいを感じられるところがありますか?
実は、僕自身も自問自答するタイプでして…。抱え込むと精神的によくないので、今はだいぶ外に向かって話すようになりましたが。性格的にはこもりがちなんです。考えすぎてしまうところもあるので、ものすごい陽のキャラクターよりは、こういった役のほうがすんなり入っていけるのかもしれませんね(笑)。

――冒頭におっしゃられたように楽曲のすばらしさも大きな魅力です。特に好きな曲を一曲教えてください。
どれもすばらしいのですが…。ひとつあげるとしたら「Waving Through A Window」でしょうか。エヴァンが最初に歌う曲なのですが、Bフラットと、とてもキーが高い。男性がBフラットを出し続けるというのはかなりきついんです。アップテンポで躍動感のあるメロディなのですが、エヴァンが自分の孤独を歌う曲なので、あまり開放してもバランスが崩れてしまう。かといって、どこかで開放しないとあの高さは歌えないし…。絶妙な曲です(苦笑)。ブロードウェイのキャストも、「もう一度あの歌を歌うのは怖い」というほどの難曲ですが、これを歌いこなせれば自分の大きな武器になっていくと感じています。

――本番がより楽しみになりました! 最後に、どんな方にこの作品を届けたいでしょうか。メッセージをお願いいたします。
いまの時代はいろんなものがあふれていて、物質的にも、情報の面でも豊かです。でも、満たされているはずなのに、どこかが満たされていない。どん底ではないけれど、めちゃくちゃハッピーではない。何かに傷ついていたり、何かが違うと思ったりしながら生きている人も少なくはないのでしょうか。この作品は、現実を突きつけられるし、死を真正面から描きますし、ものすごい浄化がもたらされるわけではない。けれど、いまを生きるそういった人たちに、ほんの少し、癒しを届けられる。そんないろんな可能性に満ちた作品なのではないかなと。この作品を通して、もしかしたらほんの少し楽になれる人もいるのではないかと思っています。
……というのはひとりの役者が言っていることですので(笑)、お客様には、ラフに、気軽に新しい劇場で素晴らしい楽曲とストーリーを楽しんでいただければうれしいです! 劇場でお待ちしております。

取材・文/塩塚 夢(産経新聞社)
撮影/桐原正道(産経新聞社)
柿澤勇人(Kakizawa Hayato)
1987年10月12日生まれ。2007年劇団四季に入団。
退団後は舞台にとどまらず、テレビドラマ、映画などに多数出演し、活動の場を広げている。
近年出演した主な舞台は、2024年彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』 で主演 ハムレット役、2025年にミュージカル『ボニー&クライド』で主演 クライド・バロウ役。
2026年3月15日に開幕するミュージカル『ジキル&ハイド』でヘンリー・ジキル / エドワード・ハイド 役を演じる。
近年出演した主な映像作品にドラマ「ライオンの隠れ家」「不適切にもほどがある!」(TBS系)、「新東京水上警察」「全領域異常解決室」(CX系)、アニメーション映画「トリツカレ男」(声の出演)など。
主演を務める2026年1月期のTBS系ドラマストリーム「終のひと」では破天荒な葬儀屋の主人公・嗣江(しえ)を演じる。
第31回読売演劇大賞 優秀男優賞(『ジキル&ハイド』『スクール・オブ・ロック』)、第49回菊田一夫演劇賞(『スクール・オブ・ロック』『オデッサ』)を受賞。
「Sky presents 柿澤勇人のカキノキ坂ラジオ」がABCラジオ、TBSラジオにて毎週好評オンエア中。
ウエンツ瑛士・木南晴夏とのユニット『カキンツハルカ』としても活動。趣味はサウナと芋焼酎。
ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』
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Stage Information

ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』
翻訳・演出:小山ゆうな
訳詞:高橋知伽江
エヴァン・ハンセン:柿澤勇人 / 吉沢 亮
ハイディ・ハンセン:安蘭けい / 堀内敬子
ゾーイ・マーフィー:木下晴香 / 松岡茉優
コナー・マーフィー:立石俊樹 / 廣瀬友祐
ジャレッド:上口耕平 / 須賀健太
アラナ:高野菜々 / 宮澤佐江
シンシア・マーフィー:瀬奈じゅん / マルシア
ラリー・マーフィー:石井一孝 / 新納慎也
他
(各役五十音順、各役ダブルキャスト)
【東京】2026年7月25日(土)〜8月23日(日)
EXシアター有明(東京ドリームパーク内)
【愛知】2026年8月29日(土)〜9月6日(日)
御園座
【大阪】2026年9月10日(木)〜21日(月・祝)
梅田芸術劇場 メインホール
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